あらすじ

定年退職後の老人・桐谷恒一は、小説投稿サイトに自作を投稿し始める。 それは華やかな物語ではなかった。 難病で病院に閉じ込められた少年時代。 後遺症で孤立した中学時代。 ようやく手に入れた青春。 親に反対されながら結婚した最愛の妻。 そして、その妻を三年で亡くし、二人の子供を抱えて父子家庭となった日々――。 仕事に逃げ、子供と向き合えず、何も伝えられないまま老いてしまった男が、自分の人生を“物語”として残そうとしていた。 彼は孤独だった。 そんな彼の拙い小説に、ある日辛辣な批評コメントが届く。 「文章が古いです」 「説明が長すぎます」 「これは小説じゃなくて日記です」 コメントの主は、同じ投稿サイトで活動する女子高生。 友達もおらず、親には「本なんか読んでも意味がない」と否定されながら、隠れて小説を書き続けている。文芸部員だったが廃部が決まっていた。部員は彼女一人。 “売れる小説”を書くことで、自分を否定してきた人間たちを見返したい。 その執念から、彼女は文章技術に異様なほど執着していた。 だからこそ小説としては不器用な老人の作品が許せなかった。 だが、どれだけ厳しく批評しても、老人は怒らない。 「ありがとうございます。勉強になります」 そう返し、本当に作品を書き直してくる。 調子を狂わされた彼女は、さらに激しく批評を重ねる。 しかし交流を続けるうち、彼女は気づき始める。 この老人は、“書こうとしている”のではない。 “伝えようと、残そうとしている”のだと。 一方、老人もまた、鋭い批評の裏にある少女の絶望と希望と孤独を知っていく。 やがて二人は、匿名のまま「二人だけの文芸部」を作る。 互いの新作を読み合い、批評し、励まし合う。 時にはラノベ論で衝突し、出版業界や映像化の是非を語り合いながら、二人は“誰かに届く物語”とは何かを模索していく。 その中で生まれていく、数々の作中作。 異世界小説。純文学。恋愛小説。家族小説。 二人は互いの作品を通して、自分自身の人生と向き合っていく。 これは、人生の終わりにようやく本音を書き始めた老人と、人生の始まりで言葉に救いを求めた少女が、“読むこと”と“書くこと”で繋がっていく物語。 そして―― 誰にも伝えられなかった言葉を、物語に変えるための物語。

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小説を読もう2026/05/21
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