あらすじ
神殿勤め十二年。
中堅聖女フローリア・ロシニョールは、自分を「どこにでもいる平凡な聖女」だと思っている。
治癒の腕は悪くない。むしろ、それなりに優秀だ。
だが、飛び抜けた奇跡は起こせない。
だから彼女の仕事は、包帯を補充し、薬品を整え、治療室を片づけ、誰かが起こした騒ぎの後始末をすることが主だった。
――それで十分。
目立たず、巻き込まれず、それが一番。
……そう思っていたのに。
ある日、長年神殿を支えてきた筆頭聖女が引退を宣言し、次代を決める「筆頭聖女レース」が始まる。
候補者は三人。
「失敗しない」と言い切る孤高の天才。
腕まくりが似合う圧の強いベテラン。
善意だけは誰にも負けない、規格外の天然娘。
誰が次代を担うのか――誰もがそう注目するなか、なぜかフローリアだけは、毎回その騒動の“後始末”を任されることになる。
怪文書、派閥争い、医療事故、そして神殿内で勝手に始まるトトカルチョ。
これは、奇跡を起こす聖女たちの物語ではない。
奇跡が絶えないよう、日々それを支え続けてきた、ひとりの中堅聖女の物語である。