あらすじ
江戸城・大奥。
最下層で働く下女・お縫(ぬい)は、
誰からも“気の弱い新参”と見られていた。
だがその正体は――
大黒屋と悪徳役人に実家を潰された、
江戸大伝馬町の商家「織江屋」の娘。
大奥に潜り込んだお縫は、
洗濯場のとぎ汁と灰から“石鹸いらずの洗浄液”を作り、
炭の組み方を変えて“燃費三割減”を実現し、
廊下の動線を読み替えて“間者”を炙り出す。
商家で培った観察眼と工夫で、
大奥に巣食う“無駄”を次々と見抜いていく。
その働きに目を留めたのは、
勘定吟味役の若き武士・水野。
「お前の工夫は、大奥を変える力がある」
洗浄、炭、配膳、季節、染め、刺繍、端切れ、香り――
大黒屋が握る利権は、
お縫の小さな工夫ひとつで揺らぎ始める。
やがてお縫は、
これまでの知恵をすべて注ぎ込んだ
“究極の小袖”を作り上げる。
それは、
大奥の美意識と価値観をひっくり返す一着だった。
「粋とは、金ではなく工夫で生まれるもの」
大奥の歪みを正すため、
下女と勘定方の静かな改革が始まる――。