あらすじ
「鏡花水月謎解帖」第五作
しだれ桜の咲く真性寺。
寺子屋には、ようやく穏やかな日々が戻っていた。
長らく留守にしていた鏡之介も帰り、水絵はほっと胸をなでおろす。
そんな折、寺に持ち込まれたのは――九匹の生まれたばかりの子猫と、九歳の母猫。
“九”という不吉な数を嫌った飼い主が、寺に助けを求めてきたのだ。
寺子たちは子猫に名前をつけ、引き取り手を探して奔走する。
やがて八匹は新しい家族のもとへ旅立つが、ひときわ小さく弱い一匹――クロだけが残されてしまう。
そのクロに向かい、鏡之介は言い放つ。
「尻尾が長い。――猫又になるかもしれんな」
らしからぬ不穏な言葉に、水絵は戸惑いを隠せない。
やがてクロは、髪結床の娘・るいに引き取られる。
兄・礼次とともに両親を説き伏せての決断だった。
だが――クロはまもなく、静かに息を引き取る。
深い悲しみに沈むるい。
手厚く葬られ、やがて立ち直ったかに見えた彼女だったが、ある日を境に寺子屋へ姿を見せなくなる。
布団に閉じこもり、何かに怯える日々。
理由を問う水絵に、鏡之介は静かに告げる。
「猫又の仕業だ」
それは、ただの迷信か。
それとも――本当に“何か”がいるのか。
猫又の正体とは。
そして、るいの笑顔は取り戻せるのか――。