あらすじ
「その祝福のヴェールは、わたくしの方が似合いますわ」
侯爵令嬢レティシアは、侯爵家嫡男ジュリアンとの結婚式を三日後に控えていた。
神殿に花嫁名を登録し、祝福のヴェールへ自ら誓い糸を縫い入れ、婚姻登録院にも書類を提出済み。
あとは式当日、神殿の灯がともれば、婚姻は正式に成立するはずだった。
けれど義妹コレットは、花嫁の座と祝福のヴェールを欲しがる。
「お姉様は堅苦しいのです。花嫁として祝福されるなら、わたくしの方が美しく見えるでしょう?」
婚約者ジュリアンも、華やかな義妹を選んだ。
ならば、とレティシアは婚約者も花嫁の座も静かに譲る。
ただし、祝福のヴェールは飾りではない。
神殿登録された花嫁本人の名、誓い糸、婚姻申請書、両家の署名。
すべてが揃わなければ、神殿の灯はともらない。
迎えた結婚式当日。
義妹はレティシアの祝福のヴェールをまとい、花嫁として祭壇へ進む。
だが、神官が花嫁名を読み上げた瞬間、誓約書の名と、祭壇に立つ花嫁が一致しないことが明らかになる。
神殿長は告げた。
「この婚姻に、祝福の灯はともせません」
崩れた結婚式でレティシアを見ていたのは、王家婚姻登録院の監督権限を持つ若き公爵だった。