あらすじ
江戸初期、幕府の国絵図作成をきっかけに、土佐藩と宇和島藩のあいだで沖之島の境界争論が起こる。
境を示す手掛かりは、島に古くから伝わる一つの歌。
――もくづ浜中、あしはおりのり。
だが、その歌を知る老女が、嵐の翌朝、浜で不審な死を遂げる。
砂には、波にも消えない黒い線が残されていた。
土佐藩郷士・土居市右衛門は、百姓に扮して江戸の評定所に立つことになるが、証言の稽古に使う島の模型には、夜ごと不可解な異変が起こりはじめる。
これは人の謀か、死者の声か。
海に境を引こうとした者たちを、墨と潮の怪異が静かに追い詰めていく。