あらすじ
土砂降りの駅前で
あなたが私の手を振り払い
「君なら平気だろう」と笑ったとき
私の胸の奥で、カチリと音がした
冷徹な、数字の歯車が回り出す音
悲しみで泣き喚くほど
私はおめでたい女ではないし
あなたの不実に付き合うほど
私の時間は安くはない
濡れた髪のままデスクに向かい
嘘、裏切り、密会の足跡を
冷たいエクセルのセルに嵌め込んでいく
数字は決して感情に流されない
最も純粋で、最も残酷な真実
翌朝の公証役場
厳格な空気のなか
あなたの罪は「公正証書」という名の
言い逃れのできない国家の記録に変わる
これで外堀はすべて埋まった
「機嫌を直してよ」と笑うあなたに
私が差し出す、厚いレターケース
血の気の引いたその顔に
私はもう一度、静かに告げよう
ええ、平気ですとも
泣いて縋る暇があるなら
あなたのこれからの人生の
完璧な「損益通算」を始めましょう