あらすじ
プロローグ:白き閃光と凍土の記憶
榛名の森は、いまや巨大な「咆哮」と化していた。
アユラの手によって放たれた「火の矢」が、腐葉土のガスを呼び覚まし、白濁した霧がヤマトの軍勢を呑み込む。しかし、その混沌を切り裂くように、一筋の**「正義の光」**が奔った。
「伏せろ!」
タケルが抜き放った**『草薙剣(くさなぎのつるぎ)』**。
その刃が放つ光は、神話の夜明けのように眩く、あまりに清浄で、そして冷酷だった。
アユラが仕掛けた森の罠も、命を懸けた抵抗も、その神剣が放つ神々しい輝きの前では、まるで塵のように打ち払われていく。
「……あ、ああっ……」
アユラは眩暈(めまい)を覚えた。かつて木の実を分け合った少年の面影は、いまやその剣の輝きに溶け、冷徹な「征服者」として立ち塞がっている。
その時だ。
アユラの隣で、低く、獣のような唸り声が響いた。
**「げいめん」**を被ったサラが、タケルの剣光を真正面から浴びて立ち竦んでいる。
その鉄の仮面に反射した白き光が、サラの網膜を焼き、意識を数千の波濤(はとう)の彼方へと弾き飛ばした。
(……この光。……知っている)
目の前のタケルが振るう剣の光が、サラの瞳の中で、かつて津軽の海を真っ赤に染め上げた「絶望の火」と重なり合う。
悲鳴、焦げ付く鉄の匂い、そして根こそぎ奪われていった「うまし里」の断末魔。
視界が白濁し、榛名の湿った森の匂いが消えていく。
代わりに鼻腔を突いたのは、凍てつく冬の潮騒と、太古の土が持つ力強い薫りだった――