あらすじ
久住灯真は、数字よりも現象を見ることが好きな青年だった。
普通の働き方にも、研究室の常識にも馴染めなかった彼が始めたのは、没入型MMORPG『ワールドゲート・オルビス』。
そのゲームには、ステータスも、レベルも、クラスもなかった。
剣士も薬師も鍛冶師も、システムが決めるものではない。
何を見て、何を覚え、何を扱えるかで、周囲が勝手にそう呼ぶだけ。
多くのプレイヤーが不親切な仕様に戸惑う中、灯真は草の葉脈、鉱石の音、文字の配置、供物の返礼、炉の振動にのめり込んでいく。
やがて彼は、複数の接続先世界で学んだ技術体系を勝手に重ね合わせ、誰も想定していなかった現象を起こしてしまう。
ゲーム内で消えた青灰銅鉱の欠片が、現実の作業場の床に落ちていた。
最初に現実へ転移するのは、石と草だけ。
けれど、その石と草は現実世界に微量の魔素を残し、異世界由来物が現実に安定するための下地を作っていく。
灯真は依頼されて進むのではない。
世界を救おうとするのでもない。
ただ、分からないことを放っておけない。
これは、好奇心の止まらない天才検証勢が、複数世界の技術を勝手に混ぜ、境界複合技術で世界の方を追いつかせていく物語。