あらすじ

### 五億円とつゆだく特盛 ポケットに眠る一枚の紙切れが 世界をにわかに黄金色へ染め上げる 五億という数字の重みに 昨日の服はあまりに軽く いつもの部屋はあまりに狭い 仕事を辞める空想の刃(やいば) タワマンの窓から見下ろす街並み 膨らみすぎた風船は やがて、小さな寝息さえ脅かす 「奪われるのではないか」という怪物の影 誰も信じられなくなる前に 重い扉を押し開け 数字を口座に閉じ込めた 初夏の青空は眩しく 私はようやく、ただの私に戻る お腹が空いた 券売機の前に立ち いつもの指を少しだけ横へ滑らせる 並盛りを特盛に変える つゆだくの汁が、ご飯に深く染みていくように 私の自由も、ここから染まっていくのだろう どれほど桁が増えようとも 私の胃袋は、私のサイズを越えはしない 一杯の牛丼を「美味い」と笑える この平熱の幸福こそが 五億円(きん)の鎖を、ただの翼に変えてゆく

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小説を読もう2026/05/21
  • 現在の作品『五億円とつゆだく特盛』