あらすじ
伯爵令嬢リディアは、家の名札、招待状、契約書、贈り物の宛名を整えるだけの地味な娘として扱われてきた。
だが彼女には、前世で郵便局の宛先不明係だった記憶と、「本当に届くべき相手」が見える不思議な力がある。
ある日、父と王太子から命じられたのは、妹ミリアへの“名前の譲渡”。
「王太子妃になるのは、リディア・ベルフォードという名だ。お前自身ではない」
名前を、婚約を、母の遺産まで奪われる。
けれどリディアは泣き崩れず、王立名簿院で静かに転送届を書いた。
「では、私宛てのものは、すべて私へ転送してください」
その瞬間、妹が身につけていた指輪も、父が隠していた母の遺産も、王家が利用しようとしていた幸運も、すべて本来の宛先へ戻り始める。
家を出たリディアを拾ったのは、名簿に存在しない郵便馬車の青年カイ。
彼もまた、ある国から名前を消された“宛先不明”の亡命王子だった。
これは、名前を奪われた令嬢が、自分宛ての幸せを取り戻しながら、誰にも届かなかった王子の未来まで届け直す物語。