あらすじ

公園に響く伴奏のなか 七十二年分の記憶が ラジオ体操の動きに合わせて 骨の髄まで、かすかに軋む タケルの背中は いつも通りの猫背で けれど、その声は凍りついていた 「幸せにできそうにない」 その言葉が 朝露に濡れた銀杏の葉のように ひらりと地面に落ちた 七十二年、待っていたのに 七十二年、隣にいたのに 指のあいだをすり抜ける 約束という名の砂時計 識字障害の私には 彼の心に書かれた「別れ」の文字は 最後まで、読むことができなかった ただ、ただ 終わりの深呼吸が 肺いっぱいに溜まって消えていく 朝日が残酷に降り注ぐ広場で 私だけが、昨日という時間に 取り残されていく

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小説を読もう2026/05/21
  • 現在の作品婚約破棄『七十二年目の朝、ラジオ体操の広場で』