あらすじ
終わりのない労働の果てに命を落とした青年は、気がつけば時代劇のような世界で、大名家の嫡男・浅葱晴信として転生していた。
何不自由ない生活が続くと思っていた矢先、彼は十八の春に、この世界では忌み嫌われる「Ω」として覚醒してしまう。
お家乗っ取りを企む叔父に命を狙われ、忠臣に助けられて夜の森へと逃げ込んだ晴信。
追手と自身の甘い匂いに絶望しかけた彼の前に現れたのは、世をすねて生きる凄腕のα浪人・黒駒甚四郎だった。
「俺を助けてくれ」
「金にならない面倒事はご免だ。だが……その必死な目を見たら、見捨てるのが面倒になった」
身分も生きる世界も違う二人。
しかし、追手から逃れ、泥にまみれて山を越える逃避行の中で、晴信は甚四郎の不器用な優しさに、甚四郎は晴信の真っ直ぐな強さに惹かれていく。
これは、運命に抗い続けた青年と、愛を信じられなかった孤独な狼が、血と泥の中で「魂の刻印」を交わし、真実の愛と温かな居場所を手に入れるまでの物語。
※本作にはオメガバース特有の発情描写、および流血を伴う戦闘・暴力表現が含まれております。15歳未満の方や、過激な描写が苦手な方は閲覧にご注意ください。
【登場人物紹介】
◇浅葱晴信(あさぎ はるのぶ)
現代の記憶を持ったまま、大名家の嫡男として転生した青年。十八歳でΩとして覚醒し、過酷なお家騒動に巻き込まれる。
世間知らずだが、前世の価値観による柔軟な思考と、決して運命に屈しない真っ直ぐな瞳を持つ。
◇黒駒甚四郎(くろこま じんしろう)
世をすねて生きる凄腕のα浪人。かつては名のある剣客だったが、ある理由から刀を捨てて放浪の旅を続けている。
ぶっきらぼうで口が悪いが、他者の痛みに寄り添う不器用な優しさを隠し持っている。
◇榊原市之進(さかきばら いちのしん)
浅葱家のお家乗っ取りを企む野心家の叔父。特権階級のαであることを笠に着ており、Ωとして覚醒した晴信を排除すべく冷酷な刺客を放つ。
◇八雲廉之助(やくも れんのすけ)
晴信に幼い頃から仕える忠実な家臣。β。実直な性格で、晴信を実の弟のように大切に想っている。主君を逃がすため、自ら囮となる道を選ぶ。
◇関屋銀次(せきや ぎんじ)
人里離れた田舎村で自給自足の生活を送るβの青年。甚四郎の古い知己であり、事情を抱えて逃げてきた二人を快く村に迎え入れる。大らかで面倒見が良い。