あらすじ
転校が決まった中学三年の夏。俺は逃げ出すことに決めた。
逃げ場所なんてどこでもよかった。
手離せない親友――啓輔の手を取って、遠く、遠くへ消えてしまいたかった。
啓輔が連れて行ってくれたのは、雄大な海が広がる場所だった。
「僕は生きることそのものからも、逃げたいと思っているからね」
寄る辺ない子供のような声が、静かに耳へ残る。
言葉の意味を理解できないまま、子供だった俺は逃げることを諦めた。
その結末が、啓輔の手を離すことだった。
啓輔と別れてから数年後。
俺の元へ一本の電話が届く。
あの日と同じ、暑い夏の日。
俺達が約束した再会は、親友の自殺という形で果たされることになる。