あらすじ
七枚の絵画に描かれていたのは、
歴史の表舞台から失われた一人の伯爵将軍だった。
トロイメリシュ美術館に残された連作絵画、
『草原に消ゆ……』
絵の前に立つ「私」は、
一冊の歴史書『帝国列伝』を手にした男性から、
そこに描かれた人物の名を聞かされる。
ヴィンツェル=エステファニア
若くして伯爵位を継いだ彼は、
古き貴族社会の慣習に抗い、
民を力で押さえつけるのではなく、
理性と寛容によって新たな時代を拓こうとした。
だが、その理想は、
小作人の反乱、煽動者の暗躍、業火に包まれる都市、
そして大国より迫り来る猛将の侵攻によって、
やがてイプソス草原大戦へと呑み込まれていく。
その戦場には、伯爵将軍が友と呼んだ白髪の少年と、
勇気ある帝国の騎士達の姿があった。
『草原に消ゆ……』は、
七枚の絵画に残された記憶をたどりながら、
理想に生きた伯爵将軍の生涯と、
失われた戦場の真実を描く、
全86話完結の戦記物語である。
※本作は、18歳の頃に執筆した未完の長編作品をもとに、
当時の原文を残しながら、現在の作者が追稿して完成させた物語です。