あらすじ

近未来。子どもたちは小学校入学前の就学時健診で、「失敗予防接種」を案内されるようになった。 忘れ物、負け試合、叱られる経験。 小さな失敗をあらかじめ疑似体験し、大きな挫折への耐性をつけるための制度だった。 けれど母親の沙也は、息子の陽太に傷つく思いをさせたくなかった。 忘れ物はアプリで防いだ。 宿題はチェックリストで管理した。 苦手なことは、先回りして取り除いた。 陽太は、よくできる子になった。 失敗しない子になった。 少なくとも、沙也はそう思っていた。 だがある日、生活科の調理体験で、陽太は卵を床に落としてしまう。 それは、ただの卵だった。 けれど陽太にとっては、初めて「戻せない」出来事だった。 「落としたことを、戻して」 失敗を避け続けた親子は、失敗したあと、どこへ戻ればいいのか。 これは、失敗しない子に育てたはずの息子と、失敗させないようにしてきた母親の、少しだけ痛くて、少しだけ温かい近未来SF。

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小説を読もう2026/05/20
  • 現在の作品失敗予防接種――失敗しない子に育てたはずの息子が、卵を落とした日