あらすじ
王太子アルセイドは、怯える女を守るために婚約者メルティナを追放した。蛇を使った嫌がらせ──蛇好きの令嬢なら、やりかねない。誰もがそう信じた。
メルティナは弁明しなかった。殿下を追い詰めても意味がないと知っていたから。代わりに片腕の侍女ジゼルとともに、殿下に取り入った女の正体を暴く道を選んだ。殿下を恨むためではない。騙されている殿下を、救うために。
だが陰謀は一人の女の背後で終わらなかった。王国に根を張る組織「白鳩の聖廊」は、有能な者を排除し、優しい王子を操り、内側から王政を崩そうとしていた。その手が、ジゼルに届く。
真実を掴んだときには、もう遅かった。メルティナのために命を賭けた侍女は、アルセイドの名のもとに処刑されていた。自分を救おうとした人間を、自分の手で殺した──その事実が、全てを変える。
蛇は恐れられるが、噛むのは怯えたときだけ。鳩は愛されるが、他の鳥の巣を奪う。この世界で本当に危険なのは、どちらだったのか。
若さゆえに騙された王子と、若さゆえに許せなかった令嬢。同じ方向を向いているのに、二度と隣には立てない。