あらすじ
「貴様には心がない。氷の人形のような顔で、夜会でも一切笑わぬ」
婚約者からの断罪を、ノエルは静かに受け入れた。彼女は人の願いが色として視える侯爵令嬢。元婚約者の背に三年間滲み続けた赤を、彼女ははじめから知っていた。
退場の際、人垣の中にひとりだけ、無色の人物がいた。エリオ・レヴァリエ公爵。人の願いを叶えるたびに命を削る呪いに縛られ、十年、誰の眼にも映らずに生きてきた人。
ふたりは互いを「視た」唯一の人間だった。けれど、ヴェルディエ家の都合で、ノエルは別の家に嫁ぐことが決まる。引き留めれば自分の命が削れる。エリオは、何も願わない。
別れの夕暮れ、ノエルは生まれて初めて、自分のために願いを口にする。
「あなたが、いつか、初めてご自分のためにお願いになる日が来ることを――」
ざまぁあり。すれ違いと再会。本編完結・1話完結の短編です。