あらすじ
「エリス・ルナール! 貴様との婚約を破棄する!」
きらびやかな卒業式パーティーの会場で、王太子カイルのドヤ顔断罪を、悪役令嬢エリスは爆速で承諾した。乙女ゲームの全シナリオが終了し、退屈な世界ルールから完全に解放されたエリスが、自由を噛み締めて出口へ歩き出そうとしたその瞬間――。
「あ゛〜……チッ。やってらんねぇ〜」
隣にいた可憐なヒロイン・サリヤが、死んだ目で舌打ちをした。
彼女がドレスの隠しポケットから取り出したのは、煙管(キセル)だけではない。鈍く光る鞭(むち)、鉄製の鎖、人間用の口枷といったガチすぎる調教具一式だった。
この異常事態に、カイルは腰を抜かして震え上がる。
彼女は最初からこの瞬間を狙って「おもちゃ」の捕獲準備を整えていた、ドSヒロインだったのだ。
さらに追い打ちをかけるように、学園の予算横領が発覚してカイルは一瞬で廃嫡・平民落ちに。後ろ盾を完全に失い、煙管の根性焼き、ピンヒールでの顔面踏みつけ、犬用首輪でのペット化というサリヤの苛烈なドS3段コンボを食らったカイルは、大号泣しながら爆速で掌(てのひら)を返し、出口へ向かうエリスの足元に這いつくばって泣きついた。
「頼むから僕を引き取ってくれ! この女から助けてくれぇぇ!!」
しかし、エリスは掴まれたドレスの裾を塵でも払うかのように冷徹に振り払い、ただ一言「お幸せに」と言い残して歩を進める。
これは、退屈な世界から完全に解放されて優雅に立ち去る元悪役令嬢と、ハッピーエンドの1秒後からドSヒロインの玩具になって、犬の散歩のように床を引きずり回されながら「敗北(負わり)」へと監禁されていく元王太子の、真逆の方向へと進むお話。
(1話完結・スピード感マシマシで贈る約3500文字の読み切り短編小説です/ラストの言葉遊びにルビあり)