あらすじ

現代の高校生・小林葵は、現代文の授業中に夏目漱石『こころ』を読み、先生とK、そして奥さんの抱える痛みに涙を流してしまう。涙が教科書の頁に落ちた瞬間、葵は鎌倉の海に立っていた。そこは、先生と「私」が出会うはずの『こころ』の世界だった。 葵は原作の結末を知っている。Kは死に、先生は遺書を書き、奥さんは真実を知らされないまま残される。そんな悲劇を変えたいと願う葵だったが、出会った先生は初対面のはずの彼女を知っているように見つめる。さらに先生の妻・静もまた、葵を覚えているかのように手を差し伸べる。けれど二人は、葵がまだ知らない言葉を決して語らない。 原作知識を頼りに動く葵は、先生の孤独、Kの弱さ、静の沈黙に触れていく。しかし、知っているはずの物語は少しずつ食い違い、救いたいという思いは先生とKの心まで揺らしてしまう。 恋は罪なのか。黙ることは誰かを守るのか。 死後に届く遺書ではなく、生きているうちに言葉を渡すため、葵は沈黙で閉ざされた『こころ』の結末に抗う。

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小説を読もう2026/05/19
  • 現在の作品先生の遺書を、まだ読まない ――「こころ」の悲劇を知る私だけが、先生を止められるはずだった。