あらすじ
「慈善の天使と呼ばれるなら、わたくしの方が似合いますわ」
侯爵令嬢クラリッサは、婚約者エドガーの後援事業を支えるため、王立救貧院の冬支度配布会を三年手伝ってきた。
孤児たちに外套、靴、手袋、毛布を渡す配布会。
それは一見、貴族令嬢が子どもたちに囲まれて微笑む、華やかな慈善行事に見える。
けれど実際は、子ども一人ひとりの背丈、足の大きさ、兄弟姉妹の組み合わせ、体調、寒風の中に立てる時間まで確認しなければ成立しない、大切な冬越しの準備だった。
妹ロゼリアは、その意味を知らないまま、婚約者の座と配布会の役目を欲しがる。
エドガーも妹を選ぶ。
ならば、とクラリッサは婚約者の座も、後援代表補佐の役目も静かに譲った。
迎えた配布会当日。
ロゼリアは子どもたちを見栄えで並べ、兄妹を離し、年長の子を後ろへ下げ、外套も靴も色順に配ろうとした。
小さな子には大きすぎる靴が渡り、年長の少年には小さすぎる外套が渡る。
そして、寒風の中で待たされた幼い子が泣き出した瞬間、孤児院長は告げる。
「これは慈善ではありません。子どもたちを飾っているだけです」
拍手が止まった広場でクラリッサを見ていたのは、王立救貧院の監督権限を持つ若き公爵だった。