あらすじ
席次表の自分の名は、婚約者から三人ぶん離された場所にあった。
シルヴィアは伯爵令嬢である。
五年前、侯爵嫡子と婚約を交わした。
以来、彼女は家政を回し、贈答記録を整え、外交書簡を書き続けてきた。
それを、当然のこととして、誰もが受け取った。
本人すらも、そう思っていた。
春の慈善茶会。
婚約者の隣には、乳姉妹の男爵令嬢が座っていた。
シルヴィアの席は、卓の四人目だった。
譲ってください、とは言われなかった。
お願いの形で、決定はもう下されていた。
冷めた茶。
柱の影に立つ、見知らぬ若い文官の視線。
扇の影で、何かを数える貴婦人の声。
「あなたが下に通されるのは、これで何度目になりますの」数えていた人がいた。
社交界の誰かが、彼女のために、ずっと数えていたのだ。
五年間、シルヴィアが黙って積み上げてきたものを、誰が、どこで、見ていたのか。
そして、見ていた人たちは、何を知っていたのか。