あらすじ
十年前、十三歳の俺は、魔王を斬った。
──はずだった。
世界の誰一人として、もう覚えていない。
俺たちが世界を救ったことも、魔王がいたことも。
力も、名も、奪われた。俺自身ですら、半分は、忘れかけている。
ヴェルドリック王国の辺境、ブレッドハム郊外。二十三歳。
鶏舎の朝。放牧地での、乳搾りバトル。市場での、嫁話。
冒険者ランクは、底辺。何でも屋として、十年。
それで、いい。──そう、思っていた。
ところがある日。
半月前に突然出現した新ダンジョン「メル神殿」浅層・薬草採取の依頼を受けた俺は、扉の向こうで──。
ダンジョンに熱狂する祝祭の街の片隅で、力も名も奪われた元・英雄が、再び迫る魔王の影に気づいてしまった。
誰の記憶にも残らないまま、もう一度、この世界を救えるか。
哀愁コメディ × 王道ファンタジー。
朴訥な主人公の、温かい日常と、静かな運命の再起動。
全25巻完結予定。