あらすじ
侯爵令嬢のアリシアは、ある日の夜会で婚約者であるマーティンの不興を買ってしまう。彼女は異端の存在である獣人の姿にマーティンの魔法によって変えられてしまう。マーティンの魔法が解ける条件は、アリシアにとって心から大切な人ができることだった。
アリシアは王都からも逃げることになる。そんな折に出会ったのが、パン屋のアンドリューだった。アリシアはアンドリューに連れられて、彼の暮らす街道沿いの水車小屋に身を寄せることになる。
街道を通る旅人を相手に商売をするアンドリューの暮らしはアリシアにとって未知の連続だった。同時にアリシアは獣人となってしまった自分は何もできないことを思い知る。けれど、アリシアはアンドリューの世話にばかりなっていられないと、粉挽の手伝いを申し出る。
年の瀬が近づいてきたころ、アンドリューがかつて暮らしていた土地の領主であるクルーニー伯爵が水車小屋を訪ねてくる。クルーニー伯爵は滞納した税金と科料として、金貨三百枚を年明けまでに用意しておくように言って去っていった。
悲観的になっているアンドリューに対して、アリシアは秘策を講じた。それはアリシアが考案した菓子を年末近くの聖礼祭向けに売るということだった。
アンドリューが王都で売るようになると、ロバーツ商会が接触してくる。アンドリューは一度は菓子のレシピを渡すも、ロバーツ商会では手に負えず、彼を商会の専属職人にという話が舞い込んでくる。しかし、彼はロバーツ商会と交渉し、金貨四百枚で聖礼祭まで職人たちの面倒を見、それ以降は彼らの誠意次第という結果を引き出した。
聖礼祭を乗り越えた後、アンドリューは王都への出店の話をロバーツ商会に持ちかけられる。アンドリューがそのことを隠していると、アリシアに看破され、二人の間に不和が生まれてしまう。
二人が言い争った翌朝、アリシアの魔法が途中まで解け、獣の耳と尻尾を持つだけの普通の少女の姿となった。アリシアにかけられた魔法がとける条件を知っていたアンドリューは彼女を意識せざるを得なかった。
今の姿ならただの町娘でごまかせるというアリシアの言葉を信じ、アンドリューは王都への出店を決める。それと同時にアンドリューは彼女へとミモザという新たな名を贈った。
王都に出店した二人は大盛況のうちに開店初日を終えた。このままではアンドリューに負荷がかかりすぎると考えたミモザは客層を絞るために値上げを提言する。
パンの値上げをしてからしばらく経った日の朝、アンドリューが刺されたという知らせが舞い込んでくる。ミモザは唯一の財産である魔鉱石を代金がわりに治療費に充て、その代わりに正体が露呈した彼女は大聖堂へと連行されていった。
アリシアは異端審問にかけられる。しかし、その場にアンドリューが現れたことで魔法が解け、儀式は中止となる。
それから数年。子宝に恵まれたミモザはアンドリューと共にパン屋を経営しながら幸せに暮らしていたのだった。