あらすじ
「直也、今回の案件は星四つや。完璧なマッチングを引き当てたぞ」
友達のトミー(20代・電気工事士)は、マッチングアプリのプロフィールを『1行目しか読まない』。
1行目に「ダブルデート希望」とさえ書いてあれば、仕様書(プロフ)の合格基準を満たしていると判断し、4行目の『夜の街を命がけで冒険してくれるスリル狂の男の人あつまれ~!』という致命的な地雷(備考欄)を1ミリも読まない。
そんなトミーに巻き込まれ、俺(直也)が連れていかれたのは――
再開発の真っ只中、夜の【天神ビッグバン】ガチの工事現場だった。
「夜の工事現場とかマジエモい~!」と現実を舐め腐って不法侵入する地雷女。
だが、現場に入った瞬間、トミーの目が完全に『プロの現場監督』に切り替わる。
女そっちのけで「D種接地が取れてねえ」「単管バリケードのクランプがガバガバや」と他人の現場の施工不良に私服でブチギレ始めるトミー。
カオス極まる暗闇の中、濡れたコンクリートで足を滑らせた地雷女は、コンクリート注入前の深さ20メートルの巨大な杭穴へと真っ逆さまに消えていき――。
「……直也、無駄や。あれは第一種接地の深さや。もう届かん」
「電気抵抗の話をしてるんじゃねえんだよ!!!」
鳴り響くサイレン、カンストするトミーの逃走現場監督能力、そして「労災統計」の話をしながら逃げる俺たち。
これは、プロフを読まない電気工事士と、現実をなめて現場の藻屑(インフラの一部)になっていく地雷女たちの、あまりにもドライで不条理な夜間パトロール(※ダブルデート)の記録である。
――天神の夜が、今夜も静かに更けていく。