あらすじ
【あらすじ】
郷田直樹(ごうだ なおき)三十四歳。地方の中堅家具メーカーで生産管理を担当する平凡な会社員。専門は木材の「あばれ」を予測し抑え込む工程設計。彼は誰にも褒められない生産日報を、十年以上ただ几帳面につけてきた。
社内には嫌な存在がいる。直樹の企画を横取りし続けてきた上司・島原光紀(しまばら みつのり)。納期遅れの責任を押しつけられた雨の夜、直樹は深夜の工場で事故に遭い命を落とす。
気がつくと、彼はエルナドラと呼ばれる異世界にいた。森林集落で木工見習いをしていた十五歳の少年カイレンの体に。
その世界では「あばれ」と呼ばれる災厄が拡大していた。大地が捻じれ、河が膨張し、生き物が歪み、最終的には世界そのものが割れる――まさに木材のあばれが、世界規模で発生していた。
森の精霊ロウラと出会い、直樹は理解する。この世界を救えるのは、十年間ただ書き溜めてきた地味な生産日報、誰にも読まれなかった工程記録、現場で身に染みた木の癖を読む技術――その全てだと。
しかし、世界の崩壊を企てる「黒ずみ」と呼ばれる存在は、なぜか前世で直樹を追い詰めた島原と同じ声、同じ言葉で彼を嘲笑する。
「お前の日報なんか誰も読まない」――その言葉に決着をつけたとき、直樹は元の世界へ戻る扉の前に立つ。