あらすじ
「家事しか能がない」と夫・エドワードに離縁されたマリアは、持参金を握りしめて見知らぬ街へと歩み出す。実家にも戻れず途方に暮れたマリアだったが、「もう誰かのために生きるのはやめよう」と決意し、古びた一軒家を借りて小さなカフェを開くことにした。
伯爵家では夫に制限されていた料理の腕が解き放たれ、カフェは口コミで少しずつ賑わいを見せていく。隣人のロザや個性豊かな常連客たちに囲まれ、マリアは離縁前には感じられなかった温かさの中で生き生きと輝き始める。
そんなある日、カフェの裏手にある騎士団の訓練場から若い騎士たちが来店。彼らに連れられてやってきた無口で強面の騎士団長・アレクは、マリアの料理を一口食べて「……うまい」と呟いてから、毎日通うようになる。不器用な気遣いを重ねながら少しずつ距離を縮めるアレクに、マリアは戸惑いながらも心が動き始めていた。
一方、元夫エドワードの商会は新妻クローディアの振る舞いが原因で取引先が次々と離れ、屋敷も手放す羽目に。憔悴したエドワードがマリアに「やり直したい」と縋りつくが、マリアは穏やかに、しかし揺るぎなく拒絶する。
エドワードへの未練を完全に断ち切ったマリアはアレクの告白を受け入れ、二人は共にカフェで新しい日々を歩み始める。「一生ここに帰ってきていいか」というプロポーズに、マリアは涙をこぼしながら「帰ってきてください、ずっと」と答えた。
捨てられたあの日から始まった小さなカフェは、今日も常連客たちの笑顔と、皿洗いをする騎士団長の姿で賑わっている。