あらすじ
「英雄の隣に立つなら、白いマントはわたくしの方が似合いますわ」
侯爵令嬢リディアは、王国の若き英雄アルバートの正式な婚約者として、凱旋式の準備を支えてきた。
凱旋式は、勝利した英雄を讃える華やかな式に見える。
だが実際は、帰ってきた兵だけでなく、帰らなかった兵の名を呼び、遺族へ敬意を示し、負傷兵の導線を守る「帰還と追悼」の式だった。
妹イレーネはその意味を知らないまま、英雄の隣に立つ白いマント姿に憧れ、アルバートも彼女を選ぶ。
ならば、とリディアは婚約者席も凱旋式の役目も静かに譲った。
迎えた凱旋式当日。
妹は花と音楽を増やし、戦死者の名を省き、遺族席を後ろへ下げた。
そして英雄の隣で微笑んだ瞬間、最前列にいるはずだった遺族たちが立ち上がる。
負傷兵たちは敬礼を下ろす。
民の拍手は、止まった。
凱旋式が崩れた広場でリディアを見ていたのは、王国軍総司令官である辺境公爵だった。