あらすじ
綺麗だと思った。本当に、それだけだった。
あの人は、いつも夕方の五時にやってくる。
町の本屋でアルバイトをしている高校生の蒼井玉兎は、毎日夕方五時にやってくる大人びた雰囲気の女性客の存在を、気にかけていた
新学期を迎え、スパルタな親からの「一番上のクラスでなければ許さない」という言いつけにおびえつつ無事に特進クラスへと進級した玉兎。
そこで後ろの席になったのが、本屋で見かけるあの女性客・有栖洋子だった。彼女が自分と同じ高校生であったことを知って玉兎は驚く。
ある日、本屋での作業中に脚立から落ちそうになった玉兎を、身を挺して受け止めて救ったのは洋子だった。
玉兎は後日、学校で洋子にお礼を申し出る。
洋子はそのお礼として、「玉兎を『月』という自分だけの特別な名前で呼ぶこと」、そして「クラスメイトとして敬語をやめてタメ口で話すこと」の二つを要求する。
洋子からの提案を受け入れ、少しずつ彼女との距離を縮めていく玉兎。厳しい家庭環境ゆえに「自分には本当の友達などできない」と諦めて心を閉ざしていた玉兎にとって、洋子は特別な、安心できる存在へと変わっていく。
しかし、洋子が向ける真っ直ぐな「恋情」と、玉兎が求めていた「純粋な友人としての好意」の間には、残酷な違いがあった