あらすじ
「祝福を受けるだけなら、わたくしの方が似合いますわ」
侯爵令嬢セレフィナは、王太子ユリウスの妃候補として、王都最大の神事・聖鐘祭の準備を三年支えてきた。
聖鐘祭は、白い衣を着て王太子の隣に立つ華やかな儀式に見える。
だが実際は、神殿、王家、孤児院、貴族代表、民衆代表が関わる、順序を一つ誤れば成立しない神事だった。
妹ミレーユは、その意味を知らないまま妃候補の座と祭の役目を欲しがり、王太子も彼女を選ぶ。
ならば、とセレフィナは静かに身を引いた。
迎えた聖鐘祭当日。
白い祝福衣の妹は壇上で微笑む。
けれど、香炉を渡す順を誤り、祈りの言葉を削り、子どもたちの合唱を前へ出した瞬間、神殿長は告げる。
「この順序では、祝福は成立しません」
王都中が待っていた聖鐘は、鳴らなかった。
そして沈黙した鐘楼の下でセレフィナを見ていたのは、聖鐘祭の監督権限を持つ王弟大公だった。