あらすじ

公募用:すべてのネタバレを含みます 14歳の少年イーヴィは、師であるクレアーティオと共に列車で旅をしていた。  クレアーティオは万能の素材であるモルス鉱石を扱える輝匠(きしょう)であった。世界中の鉱石が失活し、人口の三分の一が命を落とした大厄災である終灯日(しゅうとうび)以来、ある人物を探して各地を巡っていた。しかし目的も、探す相手も、イーヴィには教えてくれない。それでもクレアーティオの隣を歩けることが嬉しくて、イーヴィは役に立ちたいという気持ちを胸に旅を続けていた。  二人がたどり着いたのは、終灯日の被害が世界で最も少なかったカトゥリス教国の首都カトロレン。信仰篤い人々が集うこの国では、白百合が神のシンボルとして大切にされていた。クレアーティオは教会への聞き込みを続けるが、イーヴィには危険だからと留守番を命じる。役に立てない自分への焦りと、クレアーティオへの不満が募る中、イーヴィは独自に調査を開始する。  聞き込みを重ねた末、イーヴィは情報屋のベルートから廃教会の存在を教えてもらい、単身乗り込む。そこで出会ったのが、16歳の少年ラルティスだった。生物に触れるだけで鉱石に変えてしまう力を持つ「神使」(しんし)として教会に閉じ込められていた彼は、反骨精神旺盛で、外の世界への憧れを紙飛行機に込めて庭へ飛ばし続けていた。  イーヴィはラルティスに自分の正体を秘匿されたまま、旅の話を聞かせる代わりに神使の情報を得るという約束を交わし、毎日ラルティスのもとへ通うようになる。やがて二人の間には、互いを必要とする友情が芽生えていく。しかし夜間に教会の書庫へ侵入して手に入れた古聖典から、イーヴィは衝撃の事実を知る。「神使の御手の触れるに従い、生けるものは石へと成らん」その文は神使とは生物を鉱石に変える存在だと記してあった。そしてラルティスになぜ古聖典を渡したのかと問うイーヴィは、ラルティスから「もう来るな」と告げられた帰り道、意識を失って路上で倒れているところをクレアーティオに発見される。  クレアーティオに見つかったことで、イーヴィのこれまでの行動が明らかになるそれは彼なりの思いの末だったが、気持ちを否定するクレアーティオとの衝突の末、イーヴィはクレアーティオから告げられる。それはすべてイーヴィ自身のためのものだったと。  増えるばかりの疑問をラルティスに頼り解決しようとしたイーヴィだったが、教会を牛耳るウラド大司祭の罠にはまり、イーヴィは銃で撃たれて捕らえられてしまう。地下牢に幽閉されたイーヴィの前で、自分が終灯日に一度死んでいること。クレアーティオが自らのイーヴィを蘇らせたこと。その鉱石の力が尽きかけていること。そしてクレアーティオがここまで旅してきたのは、神使に新たな鉱石を作ってもらうためだったことを知る。大司祭はラルティスに「罪人たちを鉱石に変えれば鉱石の一部をイーヴィのクレアーティオに渡す」と取引を迫る。ラルティスはイーヴィを救うために、望まぬ力の行使を受け入れようとしていた。  翌日、終灯日から一年を祝う祭典の最終日。儀式の場へ連れ出されたイーヴィは、無実の罪人たちが生贄にされようとしている現場に立ち会う。ラルティスの苦悩した横顔を見たイーヴィは、誰かの犠牲の上に自分が生き延びることを拒んだ。イーヴィは大司祭の前に立ちはだかり、胸に宿る鉱石の力を全て解放することを宣言する。  「ボクが一度死んでいるなら、死んだままが正しい。だからボクが奇跡を起こします」  イーヴィが放った光は街中の鉱石へと届き、抜け殻だった白百合のネックレスに輝きを取り戻させる。しかしそれは長くは続かず、力を使い果たしたイーヴィはクレアーティオの腕の中で息を引き取った。  「あなたに貰ったこの時間の最期を、誰かを守ることに使うことを褒めてほしいです」  クレアーティオはイーヴィの願いに「これ以上ないほど優秀な弟子でしたよ」と涙ながらに応えた。  しかしラルティスは諦めなかった。輝きを取り戻した白百合のネックレスを見て、花のエネルギーを集めれば誰の命も犠牲にせず鉱石を生み出せると閃いたラルティスは、クレアーティオと力を合わせる。クレアーティオが国中の白百合のエネルギーをイーヴィの作ったバラの鉱石へと集め、ラルティスがそれを大輪の山茶花の鉱石へと変えた。その鉱石をイーヴィの胸へ——そしてイーヴィは目を覚ます。  騒乱の末、三人は大聖堂を脱出し、発車しようとする列車に飛び乗って教国を後にした。展望デッキで並んで風を受けながら、ラルティスは生まれて初めて格子の外の空を見上げ、つぶやいた。  「最高だぜ」  次の目的地へ向かう列車の中、三人は並んで座っている。新しい鉱石にも限りがある。イーヴィの命がどこまで続くかはわからない。それでも旅は続く。終わりを怖がるより、終わるときに後悔を残さない方がいい。イーヴィはそう思いながら、流れていく車窓の景色を見つめる。隣にラルティスがいて、向かいにクレアーティオがいる。その事実が、これからの旅を照らしていた。

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カクヨム2026/05/18
  • 現在の作品ボクの輝きを、色褪せた君たちへ