あらすじ
現代日本の地方には、説明されないまま処理されているものがある。
水野桂一は、地域の仕事ブログと調査代行をしている青年。
猟友会、役場、土建屋、漁師、消防団、商店街――地方の現場に出入りするうちに、彼は普通なら見過ごされる“違和感”へ近づいていく。
ある日、桂一は知り合いの猟友会メンバーから、罠に掛かった獣の荷運びを頼まれる。
しかし、林道の奥でブルーシートに包まれていた“それ”は、イノシシにしては軽すぎた。
獣臭も、血の匂いもない。
あるのは、白い石灰と消毒薬の匂いだけ。
山を下りた先で待っていたのは、黒い車両と、防護服の人間たち。
そして、所属も肩書きもない名刺を差し出す長身の男。
これは、怪異を倒す物語ではない。
怪異を暴く物語でもない。
地方社会の沈黙、行政の判断、災害の記憶、山と海への畏怖。
その境界に滲み出る“説明しきれないもの”を、記録してしまった人間たちの調査譚である。
怖がるより、扱う。
断定せず、記録する。
現代地方社会派ホラー調査譚、開幕。