あらすじ

白の家の王女として生まれ、八歳で実母以外の手により毒杯ですり替えられ、奴隷穴に堕とされた少女。十六年後、左腕と右目と右手の指を欠いた身で穴より這い出した彼女は、ただひとつの目的のため故国の冒険者ギルドへ戻る——家族と、自らを陥れた者たちへの、復讐。しかし神血の加護を持つ彼女は、簡単には死ねない。眠れば癒え、毒は効かず、剣神の加護はわずかな傾きとして棒一本を剣に変える。彼女は逃亡奴隷の烙印を背に北の国境へ流れ、盗賊となり、奴隷と子供と老人ばかりの開拓村「灰村」を築く。馬鍛冶のガロ、両肘を失った先代敵国将軍ガレン・ヴォル、痩せぬ瞳のネネ、そして自らの手で滅ぼした家の遺児リオン——欠落した者たちが家臣として集い、彼女の冷えた感情の隙間に、ひと粒ひと粒、温度を取り戻していく。兵書を読み、商館を建て、為替で敵国の王太子を駒とし、宮廷の毒殺計画を逆手に取る。やがて灰の煙は南街道を越え、玉座の足元にまで届く。これは、剣神に至る前の、ひとりの欠けた女と、欠けた家臣たちの、灰色の年代記。

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カクヨム
カクヨム2026/05/18
  • 現在の作品灰のレン ―林檎の渦を断つ―