あらすじ
1998年5月、ゴールデンウイークの淡路島西海岸。
今のようなおしゃれなカフェも観光施設もまだほとんどない時代。海と夕日だけが広がる町で、民宿の娘・奈美は、震災から建て直したばかりの宿を手伝いながら暮らしている。
進学して島を出た同級生たちを眩しく思いながらも、忙しい毎日に追われ、自分の気持ちには蓋をしたまま。
毎日見ている海も夕日も、奈美にとっては“あたりまえ”の景色だった。
そこへ、一人旅の青年がやって来る。
人懐っこいが、どこか掴みどころがなく、島の夕日をまっすぐ「綺麗だ」と言う彼。
最初は戸惑っていた奈美も、彼と過ごすうちに、見慣れていた景色を少しずつ違う目で見るようになっていく。
国生み伝説が残る“はじまりの島”──淡路島。
海の匂い、静かな波の音、漁師町の暮らし、そして西海岸に沈む夕日。
大きく変わってしまったものと、変わらずそこにあるものの中で、奈美は自分の未来を見つめ始める。
“あたりまえ”だと思っていた夕日は、誰かにとって、かけがえのない景色だった──。