あらすじ
収容室で目を覚ました彼は、鋼の柱に鎖で縛り付けられていた。その体内には、正体不明の腐食性液体が流れている。逃げ出した先で彼が知ったのは——国家全体が自分を追っているという事実と、自分がなぜ罪を犯したのかさえ覚えていないという衝撃だった。
時似対銘国(トキニタイメイコク)。数十億の人口を抱える鋼鉄の巨城。法律は完璧で、科学技術はこの星で最も進んでいる。そこにあるのは暴力政治ではなく、合法と民主主義と正義だけだ。特異体としての能力を失った逃亡者、珒京玹(キン・キョウゲン)。彼は「国家反逆」の罪を背負いながら、その「犯行」の記憶さえも曖昧にしか思い出せない。
地下組織が彼をかくまい、旧要塞「䬃」(サッ)が最後の隠れ家となった。しかし、軍隊、類人機、特異体、そして時似対銘国全土の二千億人による投票——すべてが彼を同じ深淵へと突き落とす。すなわち、死へ。
これは、決して引き返せない逃走の物語。
矽元涌離——嘘が崩れ去るとき、真実はその裂け目からあふれ出る。そして、別れが訪れる。
「まさかお前一人で、国家に立ち向かえると思っているのか? 珒京玹。」