あらすじ
僕には、魔物の声が聞こえる。
痛い、怖い、やめて。
倒すべき相手の声が胸に流れ込んでくるせいで、僕はいつも最後の一太刀が遅れる。
勇者学園では、そんな僕を誰もが落ちこぼれと笑った。
それでも僕は、聞こえた声を無視できなかった。
卒業試験の日、討伐対象として檻に入れられていたのは、凶暴な黒悪獣――のはずだった。
けれど僕にだけ、その魔物の本当の声が聞こえる。
苦しい。
人を殺したくない。
われを忘れたのか。
それは魔物ではなく、支配の杭に縛られ、闇に落ちかけた伝説の黒神獣ガルムの幼体だった。
誰にも信じてもらえなかった声。
勇者には向いていないと思っていた力。
けれどその力が、誰にも救えなかった神獣を救う。