あらすじ
中堅企業に勤める景司は、業界でも名高い探偵に奇妙な依頼をする。「私を調査してください」。探偵は困惑するが、調査を進めるうちに、その真意が単なる自己分析ではないことを知る。景司は、自分を取り巻く人々が自分をどう見ているかを通じて、組織の力学や人間関係の本質を知ろうとしていたのだ。
報告書を手にした景司は、社内政治や人脈形成を巧みに読み解き、誰も手を挙げない難事業を成功へ導く。やがて会社の枠を超え、財界、行政、教育機関、金融界を結ぶ存在となっていく。しかし彼の目的は出世でも権力でもなかった。人口減少と衰退に直面する故郷に、未来を選べる仕組みを残すことだった。
人を操るのではなく、人と人を繋ぐ。権力を独占するのではなく、次世代へ受け渡す。そのために景司は成り上がり、影響力を手に入れたのである。最後に彼が探偵へ依頼したのは、「景司がいなくなった後の町」の調査だった。壮大な情報戦の果てに、一人の男が辿り着いた人生の答えを描く長編。