あらすじ
高校時代、景司はいじめの被害者となる。ようやく訪れた謝罪の場で、加害者の親から「この子も反省してつらい思いをしている」と告げられた瞬間、景司は世の中の大きな理不尽に気付く。なぜ傷つけられた者より、傷つけた者の心情が先に語られるのか。
その疑問は社会に出ても消えなかった。努力した者より報告した者が評価され、数字にならない価値は軽視される。問題を起こした者より、それを指摘する者が疎まれ、理不尽は多くの善人たちの沈黙によって支えられていた。景司は怒り、悩み、失望しながらも、人間社会の本質を見つめ続ける。
やがて歳月が流れ、かつて自分を傷つけたいじめっ子との再会を経て、景司は人の弱さだけでなく、人が変わろうとする可能性にも気付いていく。そして人生の晩年、何気ない挨拶を交わした一人の少年との出会いから、世界を大きく変えることはできなくても、誰かの心を照らす小さな灯にはなれるのだと知る。
理不尽な社会を見つめ続けた一人の男が辿り着いた、静かで温かな希望の物語。