あらすじ
剣術の道を閉ざされ、江戸・永代橋の袂で自ら命を絶とうとしていた青年・景司。そんな彼を救ったのは、無愛想な職人・鉄五郎が差し出した一個の「握り飯」だった。米の旨味と人の情が染み渡るその味に魂を揺さぶられた景司は、刀を捨てて鉄五郎に弟子入りする。苛烈な修行の中で、景司は単なる調理の技ではなく、「色悪く世間に叩かれた米でも、握り手の塩梅ひとつで天下無双の味になる」という、米と人間の生き様を学んでいく。やがて師の「剛の味」に対し、己の傷ついた過去を宿した「情の味」を開花させた景司。師との別れを経て、永代橋の屋台を引き継いだ彼は、かつての自分のように絶望を抱えて夜を彷徨う人々へ、明日を生きる活力を与えるおにぎりを握り続ける。