あらすじ

定年後、故郷へ帰った景司は、幼い頃から慣れ親しんだ駅を訪れる。自動改札や新しい設備に変わった駅を歩くうちに、彼の脳裏には昭和の駅の風景が次々と蘇る。 チッキの窓口に積まれた荷物、蒸気機関車へ水を送る給水塔、煤を洗い流す手洗い場、貨物ホームで働く赤帽たち、駅員と運転士が一瞬で受け渡すタブレット交換。そこには旅だけでなく、人々の暮らしと仕事が息づいていた。 また、駅食堂のカレー、石炭ストーブを囲む待合室、宿直室で働く駅員たちの姿など、少年時代の景司を育てた無数の思い出も蘇る。名も知らぬ大人たちの優しさや誠実な仕事は、いつしか景司の人生観そのものとなっていた。 失われた駅の設備を懐かしむうちに、景司は気付く。自分が愛していたのは建物や列車ではなく、そこで生きていた人々だったのだと。駅は出会いと別れを見守り続ける人生の縮図であり、自らの歩んできた人生そのものだった。 昭和の地方駅への郷愁と、一人の男の人生を温かく描く回顧小説。

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エブリスタ2026/06/05
  • 現在の作品駅は人生の待合室 景司、昭和の駅を歩く