あらすじ
競技かるた部のエース、篠原詩織(しおり)、十七歳。全国大会前夜、地元の古社で百人一首を素読みしていた彼女は、突然めまいに襲われ――気がつけば、平安京・賀茂川のほとりに倒れていた。
「……いま、何時代って言いました?」
千年前の都に放り込まれた女子高生を拾ったのは、後宮で「氷の貴公子」と恐れられる若き陰陽師、藤原影継(かげつぐ)。彼が抱えていたのは、後宮で頻発する奇怪な事件だった。妃たちのもとに届けられた「贈り歌」を声に出して詠むと、詠み手が原因不明の高熱で倒れる――。世にいう、「歌の呪い」。
当代一の陰陽師にも解けぬ呪詛の正体は、現代の競技かるた部員にしか見抜けない「掛詞のからくり」だった。
「呪いじゃないですよ、これ。たぶん、ただの……日本語のいじわるです」
言葉に鈍感な平安貴族と、言葉に鋭敏な女子高生。雅な御簾の向こうで微笑む女御たち、その白い手のひらに隠された嫉妬と陰謀。スマホもwi-fiもない都で、詩織はたった一つの武器――「ことのは」――を頼りに、宮中の謎を詠みほどいていく。
これは、千年前の都で女子高生がうたを詠み、雅な悪意を斬る、ひそやかな宮中ことのは事件帖。