あらすじ

魔王を倒した。 世界は救われた。 王国は歓喜に包まれ、人々は勇者アルトの名を称えた。 しかし、その日を境に、アルトは何もできなくなった。 朝起きることも。 剣を握ることも。 誰かと会うことさえも。 世界を救うためだけに生きてきた彼には、魔王討伐後の人生が存在しなかったのだ。 王都では英雄として祭り上げられ、 かつての仲間たちは新たな人生へ歩き始めていた。 賢者は大学を設立し、 聖女は孤児院を経営し、 戦士は騎士団長となった。 誰もが前へ進んでいる。 ただ一人、勇者だけが立ち止まっていた。 「次の目的がない」 それが彼を少しずつ蝕んでいく。 そんなある日。 アルトは辺境の小さな村で、一人の少女と出会う。 少女は言った。 「世界なんて救わなくていいから、 まず明日の朝ごはんを食べなよ」 その言葉は、どんな称賛よりも彼の心に届いた。 勇者は再び旅に出る。 魔王を倒すためではない。 誰かに必要とされるためでもない。 自分自身を探すために。 かつて世界を救った男が、 今度は自分自身を救う物語。 これは、 『生きる理由を失った勇者』が、 もう一度人生を好きになるまでの長い旅の記録である。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/06/08
  • 現在の作品『勇者が鬱になりまして』