あらすじ
回復できない聖女姫アリシアは、戦場で傷ついた騎士を前にして、自分の無力さを思い知らされていた。
どれだけヒールをかけても、傷は塞がらない。神官たちからは役立たずと蔑まれ、聖女姫の祈りは誰にも届かない。
だが、アリシアのヒールは傷を塞ぐための力ではなかった。治癒を拒む黒い靄、すなわち呪いを祓うための力だったのだ。
そして、その黒い靄を見ることができるのは、アリシアの願いに引き寄せられて異界から現れた悪役女子レスラー、黒羽怜奈だけだった。
「ここがどこの会場かは知らないけどさ。弱ってる奴から狙う三流を、客前で好きに暴れさせる趣味はないんだよ」
怜奈は倒れた者の前に立ち、アリシアに教える。受け身を。重心を。踏み込みを。そして、ヒールの本当の意味を。
回復のヒールだけでは届かない傷がある。
踵のヒールで踏み込まなければ祓えない呪いがある。
悪役のヒールだからこそ、憎しみを引き受けて前に立てる時がある。
これは、役立たずと呼ばれた聖女姫が悪役女子レスラーとタッグを組み、理不尽な呪いを文字通り踵で踏み砕き、倒れた者をもう一度立たせるために戦う百合ファンタジー。