あらすじ
完璧なキャリアと美貌を誇り、誰もが憧れる存在だった町田朋美。しかし、ある凄惨な事件をきっかけに、彼女の日常は音を立てて崩壊する。心身ともに限界を迎えた彼女に手を差し伸べたのは、かつて花火大会の夜に出会った男・鳴海真之助だった。
彼が用意したマンションの一室。そこは外の世界のあらゆる脅威から遮断された、圧倒的に優しく居心地の良い安全基地。スマートフォンの解約、社会との断絶――真之助の巧妙な「計算」によって、朋美の生活は少しずつ、しかし確実に書き換えられていく。
一人の時間はパニックと激しい拒絶反応に襲われ、彼の匂いが残る枕にしがみつくことでしか正気を保てない。そして、彼の前でだけ人間らしい安寧を取り戻していく朋美。外の世界からの捜索の手が迫る中、彼女の恐怖は「元の世界に戻されること」ではなく、「真之助から引き離されること」へとすり替わっていき……。
自ら檻の鍵を内側から締め直した女と、完璧な回収率で彼女を支配する男。世界のすべてを捨てて行き着く、逃避行の果てにあるものとは。
人間の精神が「優しい呪縛」によって美しく、そして恐ろしく解体されていく過程を描いた、緊迫のサイコ・サスペンス。