あらすじ
1984年、日本。カミヤ・リヴィエール——本名カミーユ——はフランス出身の編曲家で、音楽会社NYXに勤めながら、異国の文化に馴染めず、アンフェタミンに溺れる日々を送っている。外国人であるがゆえに名前を日本語読みに変えさせられ、自国の文化も芸術も否定されてきた彼の心は、静かに、しかし確実に壊れていた。
同じ11月の一日が、三つの時間軸で語られる。
午前、宇城真警察署の取調室。疲れた刑事・谷村秀樹と、顔に大きな火傷跡を持つマッケンジーが、またも連行されたカミヤと向き合う。カミヤは笑い、挑発し、悪態をつく——しかしその震えは、怒りではなく崩壊の証だった。唾液検体を採取された後、彼は家へと送り返される。
午後、NYX本社。刑事のナカムラ・ジョニーは不安げな通話を終え、陽気な同僚イチゴ(セバスティアーノ)に迎えられる。二人はともに、共通の友人カミヤのことを案じていた。彼なしでは、自分たちの人生はもっと険しかっただろうと。
夕方、ある個人宅の浴室。熱いお湯で満たされた浴槽の前に、男が静かに座っている。窓に白いものがよぎり、ノックが響く。男は穏やかに微笑み、目を閉じた。
「……やっと」
二つの文化のはざまで、どちらにも居場所を持てなかった一人の人間の物語。そして——間に合わなかった人たちの物語。