あらすじ
これは深夜、とある交番で起きた話です……。
ガラリと引き戸が勢いよく開き、夜の湿った空気を振り切るようにして、巡査部長が慌ただしく中へ踏み込んできた。
机に向かっていた部下の警官は椅子から勢いよく立ち上がり、背筋を伸ばして敬礼した。
「お疲れ様です」
「おお、お疲れ……それか?」
巡査部長は息を弾ませたまま机の上に置かれた黒い鞄へ視線を落とした。
警官は神妙な顔で頷いた。しかし直後、その口元がわずかに緩んだ。どうしても抑えきれない興奮が滲み出していた。
巡査部長もまた似たようなものだった。荒い息はなかなか収まらまず、鞄を見つめる目は爛々としている。しかし、それも無理はない。
「現金の届け出だってな。それも大金らしいじゃないか」
巡査部長は軽く咳払いをしてから言った。警官の顔に視線をやったものの、磁石のようにすぐにまた鞄に引き寄せられた。