あらすじ

十年という時間は、長い。 けれど恋をしている人間にとっては、驚くほど短い。 子どもの頃から隣にいて、 泣いた日も、 笑った日も、 夢を語った日も知っていた。 だから信じていた。 「いつか」 その言葉を。 明確な約束ではなくても、 指先に触れる優しさを。 二人の未来を語る声を。 隣にいることが当たり前だという空気を。 信じていた。 だから働いた。 夜遅くまで帳簿をつけた。 休日も工場へ通った。 数字を整え、 資金を繋ぎ、 会社を支えた。 好きだったから。 ただ、それだけだった。 けれどある日、 その十年はたった一言で切り捨てられる。 「地味だな」 笑いながら言われた。 「もうお前はいらない」 みんなの前で言われた。 積み重ねた日々は、 紙くずより軽かった。 愛情は無価値だった。 献身は当然だった。 そんなことを知った。 だから私は去った。 泣きながらではない。 怒りながらでもない。 ただ静かに。 数字を残して。 契約を残して。 事実を残して。 そして初めて知るのだ。 支えていた柱を失った家が、 どれほど脆いのかを。 感謝を忘れた人間が、 どれほど愚かなのかを。 三か月後。 会社は崩れた。 恋も崩れた。 人生も崩れた。 けれど私は振り返らない。 あの日失ったのは、 幼馴染ではない。 私を都合よく使う人だった。 だから前を向く。 十年の後悔ではなく、 これからの人生のために。 初夏の風が吹く。 新しい季節の匂いがする。 ようやく私は知った。 誰かに選ばれるのを待つよりも、 自分で歩き出した方が、 ずっと自由なのだと。

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小説を読もう2026/06/08
  • 現在の作品【幼馴染だからって、無料で会社を支える義理はありません】 ~婚約を匂わせて十年こき使った幼馴染は、私が去った三か月後に倒産しました~