あらすじ
ネオンは星の代わりに瞬き、
眠らぬ街は今夜も息をする。
欲望の煙。
嘘の香水。
砕けた夢の欠片たち。
誰かの笑い声と、
誰かの泣き声が、
同じ夜の底で混ざり合う。
その街の片隅に、
ひっそりと灯る一軒の店がある。
BAR「天の逆鉾」。
神も。
人も。
妖も。
絶望を抱えた者なら、
誰でも迎え入れる場所。
重たい扉を開けば、
琥珀色の光が揺れている。
磨き抜かれたグラス。
氷の澄んだ音。
静かにシェイカーを振る男。
荒ぶる神の名を持ちながら、
今は酒を注ぐ者。
須佐之男命。
かつて剣で世界を救った男は、
今は一杯のカクテルで
誰かの心を救っていた。
そして今夜、
一人の少女が店へ転がり込む。
七人の姉を失った末娘。
櫛稲田姫。
震える指。
こぼれる涙。
失われた未来。
彼女を追うのは、
夜そのもののような怪物。
八つの顔。
八つの欲望。
八つの飢え。
八岐大蛇。
街を喰らい、
人を喰らい、
希望さえ飲み干そうとする支配者。
だが怪物は知らない。
夜には夜の終わりがあることを。
絶望には終点があることを。
そして、
応援する人々の声が、
時に神々の力になることを。
画面の向こうから届く声。
「負けるな」
「頑張れ」
「守ってくれ」
「生きてくれ」
文字となった祈りは、
光の粒となって空を舞う。
千の願い。
万の想い。
無数の希望。
それらは一つのグラスへ注がれる。
神酒となり。
勇気となり。
奇跡となる。
シェイカーが鳴る。
それは戦いの鐘。
氷が踊る。
それは反撃の始まり。
酒は満たすためだけにあるのではない。
時に真実を暴き、
時に怪物を酔わせ、
時に人を立ち上がらせる。
夜を支配した蛇は、
やがて自らの欲望に溺れて沈むだろう。
その時、
夜明けは静かに訪れる。
冷たいフローズンダイキリの向こうで、
新しい朝が微笑む。
だから今夜も、
BAR「天の逆鉾」は灯りを消さない。
迷い人が来る限り。
誰かが涙を流す限り。
誰かが希望を求める限り。
神代の物語は終わらない。
グラスの中で揺れる光とともに、
今夜もまた、
新たな奇跡が注がれる。