あらすじ

祖父の遺言は「夏の地方予選を見に行き、見たものを言葉にしてほしい。」という二行だけだった。編集者の渉は意味を掴めぬまま球場へ向かう。  応援席で泣く人々に違和感を抱く中、三年間一度も試合に出られない補欠選手・蓮と、その母・敦子に出会う。敦子は「蓮がここにいるから来る」と語り、試合に出られなくても積み重ねた時間の存在を静かに見つめ続けていた。  やがて決勝、蓮の出場は叶わない。それでも敦子は変わらず応援を続ける。渉は、彼女の視線の先に「ここにいた三年間」という見えない時間が確かに存在していることに気づく。  敗戦後、敦子の涙は終わりを見届けた証だった。渉はようやく理解する。見ていた人間がいれば、その時間は消えずに残り続けるということを。祖父もまた、出場できなかった選手たちの時間を見続け、自らの中に留めていたのだ。言葉にすることでそれは他者へも届く。  渉はその意味を受け取り、見たものを書き始める。祖父の願いは、これからも続く営みとして渉に受け継がれていく。

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エブリスタ2026/05/29
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