あらすじ
寂れた商店街の片隅に、夜な夜な電球色の明かりを灯す風変わりな店がある。
――『想い出質屋』。
そこは、モノではなく「人間の記憶」を質に入れることができる奇妙な場所。
店主が提示するルールは三つ。
一、記憶を預けている間、その出来事は綺麗さっぱり忘れること。
二、期限までに元金と利息を払えば、記憶は頭
へと戻ること。
三、流質となった記憶は店主のものとなり、二度と思い出せないこと。
「忘れてしまえば、どれだけ楽になれるだろう」
実家が倒産し、生きるために初恋の思い出を売りに来た元お嬢様。
相方に裏切られ、夢を諦めた夜の記憶を消したい元クリエイター。
大切な人を失った悲しみに耐えかね、その人の存在ごと質に入れようとする老人。
今夜も、現代社会の理不尽な現実に心が折れかけた迷い人たちが、それぞれの「捨てられない記憶」を抱えて暖簾をくぐる。
これは、知りたくなかった他人の本音と優しい嘘が交錯する、現実99%、不思議1%の、少し切なくて温かい真夜中のヒューマンドラマ。
「あなたのその未練――いくらで買い取りましょう?」